手書きの領収書で一番気をつけたいのは、金額と日付を後から書き換えられない形で書くことです。金額は「¥100,000-」や「金壱拾万円也」のように頭と末尾を閉じ、日付は年から省略せずに書きます。領収書の書き方を決めた法令はありませんが、国税庁の納付書の記載要領、手形法や戸籍法施行規則の規定には、金額や年月日の改ざんを防ぐ考え方がはっきり表れています。この記事では、それらの一次情報を手がかりに、整備工場や車販店の窓口で使える金額と日付の書き方を、印紙税の判定とあわせて整理しました。
この記事で確認した一次情報
- 納付書(領収済通知書)の記載要領(国税庁)合計額の金額頭部に「¥」、黒のボールペン、書き誤ったら書き直し
- 手形法 第6条/小切手法 第9条(e-Gov法令検索)文字と数字で金額に差異があるときの扱い
- 戸籍法施行規則 第31条(e-Gov法令検索)年月日を記載するには壱、弐、参、拾の文字を用いる
- 適格請求書等保存方式に関するQ&A 問58-2(国税庁)手書きの領収書による適格簡易請求書の記載例
- タックスアンサーNo.7124(国税庁)消費税額等が区分記載された受取書の記載金額
- 印紙税額一覧表(国税庁・令和8年5月22日現在)第17号文書の税額
手書き領収書の金額の書き方(¥と-、金と也)
手書き領収書の金額は、「¥100,000-」のように頭に「¥」、末尾に「-」を付け、3桁ごとにカンマを入れて書くのが基本です。漢数字で書くなら「金壱拾万円也」のように頭に「金」、末尾に「也」を付けます。どちらも、数字の前や後ろに桁を書き足されるのを防ぐための書き方です。領収書の金額の書き方を定めた法令はありませんが、国税庁の「納付書(領収済通知書)の記載要領」は、納付する税額の合計額は金額頭部に「¥」記号を付けて記載するよう求め、数字は黒のボールペンで枠内へ丁寧に書くよう案内しています。国税庁Q&A問58-2の手書きの領収書の記載例でも、金額は「16,500 円」のように3桁区切りで書かれています。車検の会計なら「¥98,450-」、鈑金修理なら「¥1,320,000-」と書けば、1桁足されて金額が変わる余地はなくなります。
| 書き方 | 記入例 | 防げること |
|---|---|---|
| 頭に「¥」、末尾に「-」 | ¥98,450- | 前に「1」、後ろに「0」を書き足される |
| 頭に「金」、末尾に「也」 | 金九万八千四百五拾円也 | 漢数字の前後に書き足される |
| 3桁ごとのカンマ | ¥1,320,000- | 桁の読み違い、0の書き足し |
| 金額欄の余白を詰める | 枠の左端から書き始める | 空いた左側に数字を足される |
「¥」の後ろを空けずに数字を書くこと、「-」の後ろに余白を残さないことも大切です。複写式の領収書では、下の控えに写った金額も読めるか、渡す前に確認しておくと、後で控えと照合するときに困りません。
大字(壱・弐・参・拾)を使う場合の書き方
大字とは、一・二・三・十の代わりに壱・弐・参・拾と書く字のことで、一画足すだけで別の数字に変えられる漢数字の弱点を補うために使われます。法令の例として、戸籍法施行規則第31条は、戸籍の記載では略字や符号を用いず字画を明らかにすること、年月日を記載するには壱、弐、参、拾の文字を用いることを定めています。これは戸籍についての規定で、領収書に大字を使う義務はありません。ただ、「一」は「二」や「三」に、「十」は「千」に書き換えられやすいので、漢数字で金額を書くなら、少なくともこの4つは大字にしておくと安全です。整備工場の窓口では、アラビア数字と「¥」「-」で書けば十分で、大字はお客様から漢数字での記載を頼まれた場合に使う程度で足ります。
| 通常の漢数字 | 大字 | 書き換えられやすい例 |
|---|---|---|
| 一 | 壱 | 一に一画足して二、二画足して三 |
| 二 | 弐 | 二に一画足して三 |
| 三 | 参 | 画数の少ない漢数字は書き足しに弱い |
| 十 | 拾 | 十に一画足して千 |
たとえば車検代98,000円を漢数字で書くなら「金九万八千円也」、この金額には壱・弐・参・拾にあたる字がないので、通常の漢数字のまま書けます。110,000円なら「金拾壱万円也」となり、大字の効き目がはっきり出ます。
漢数字と数字で金額が食い違った場合
1枚の領収書に漢数字とアラビア数字の両方で金額を書き、2つが食い違っていた場合、どちらが正しいかを定めた領収書向けの規定はありません。参考になるのは手形と小切手で、手形法第6条第1項と小切手法第9条第1項は、金額を文字と数字で記載した場合に差異があるときは、文字で記載した金額を手形金額・小切手金額とすると定めています。同じ条の第2項は、文字だけ、または数字だけで重複して書いて差異があるときは、最小金額によるとしています。これは手形と小切手のための規定なので、領収書の金額をこのルールで決められるわけではありません。食い違った領収書は、受け取った側の経理でも扱いに困ります。金額欄は1か所だけにするか、両方書くなら渡す前に読み合わせ、違っていれば新しい用紙に書き直してください。
中古車販売の契約で手形や小切手を受け取る場面は少なくなりましたが、受け取った手形・小切手の金額の扱いは上の規定によります。領収書の書き方とは分けて考えてください。
手書き領収書の日付の書き方
手書き領収書の日付は、代金を受け取った日を、年を省略せずに「令和8年10月5日」や「2026年10月5日」のように書きます。和暦と西暦のどちらを使うかを定めた法令はありません。国税庁Q&A問58-2の記載例も「●年●月●日」となっていて、表記の形式までは指定していません。インボイス制度で領収書を適格請求書として渡す場合は、記載事項として「課税資産の譲渡等を行った年月日」が必要です。Q&A問25は、一定の期間内の取引をまとめて適格請求書を作る場合には、その期間を書けるとしています。車検で入庫日、作業完了日、支払日がずれる場合は、領収書の日付は支払いを受けた日にして、作業の完了日を但し書きや内訳欄に添えるなど、取引年月日が読み取れる形をそろえておくと、お客様の経理処理で迷われません。日付欄を空けたまま渡すのは避けてください。
- 年は省略しない。「8年10月5日」のように元号を抜くと、どの年か分からなくなる
- 和暦か西暦かは店内で統一し、ゴム印の日付印を使うなら年の表示を確認する
- 月日の一桁は「10月5日」のまま書いてよいが、前に数字を足されないよう詰めて書く
- 前受金や手付金を受け取った場合は、受け取った日と、何の代金の前受けかを書く
税込・税抜と消費税額の書き方で収入印紙が変わる例
手書き領収書の金額欄に消費税額を区分して書くかどうかで、収入印紙の要否や税額が変わることがあります。国税庁タックスアンサーNo.7124によると、消費税額等が区分記載されているか、税込価格と税抜価格の両方が書かれていて消費税額等が明らかな場合、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めません。同じページの例2では、「商品販売代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」と書いた領収書は記載金額48,000円となり、5万円未満なので非課税です。一方、「消費税額等10パーセントを含む」や「(税込)」とだけ書いた場合は、消費税額等が明らかとは言えず、全額で判定されます。なお消費税の免税事業者が消費税額を書いても、その金額は記載金額に含めて判定します。手書きでも、国税庁Q&A問58-2は税込価額が書かれていれば税抜価額を書く必要はないとしていますが、印紙の判定のためには消費税額も書いておくと有利です。
| 手書きの書き方 | 印紙税の記載金額 | 印紙税額(第17号の1文書) |
|---|---|---|
| ¥52,800-(うち消費税額等 ¥4,800) | 48,000円 | 非課税(5万円未満) |
| ¥52,800-(税込) | 52,800円 | 200円 |
| ¥1,045,000-(うち消費税額等 ¥95,000) | 950,000円 | 200円(100万円以下) |
| ¥1,045,000-(税込) | 1,045,000円 | 400円(100万円を超え200万円以下) |
下の2行は中古車販売や大きな鈑金修理を想定した例です。税込で100万円をわずかに超える取引でも、消費税額等を区分して書けば記載金額は100万円以下になり、印紙税額は200円で済みます。印紙は印紙税法第8条により、課税文書の作成の時までに貼り、文書と印紙の彩紋にかけて判明に消さなければなりません。金額を書いたら、渡す前に印紙と消印まで済ませる流れにしておきましょう。
書き損じた手書き領収書の直し方
手書き領収書の金額や日付を書き損じたら、二重線と訂正印で直すより、新しい用紙に書き直すのが安全です。領収書の訂正方法を定めた法令はありませんが、国税庁の納付書の記載要領は、合計額を書き誤ったときや汚損がある場合は新しい納付書に書き直すよう案内しています。戸籍法施行規則第31条も、戸籍の文字を訂正・削除したときは字数を欄外に記載して認印を押し、削除された文字をなお読めるようにしておくことを求めており、公的な書類ほど訂正の跡を厳格に扱っていることが分かります。金額を直した領収書を受け取ったお客様は、経費精算で説明を求められるかもしれません。書き損じた用紙は破らずに「書損」と書いて控えと一緒に保管すると、領収書番号が飛んだ理由を後から説明できます。収入印紙を貼って消印まで済ませた後に書き損じた場合の扱いは、所轄の税務署に確認してください。
- 書き損じた用紙は捨てず、「書損」と書いて控えと一緒に綴じる
- 新しい用紙には新しい領収書番号を使い、書損の番号と対応が分かるようにする
- 消せる筆記具は使わない。黒のボールペンなど、消えない筆記具で書く
- 金額欄を直したまま渡すことは避け、お客様を少し待たせても書き直す
手書き領収書の限界と電子領収証への切り替え
手書き領収書は、用紙とペンがあればすぐ出せる反面、金額の書き方、消費税額の区分、日付、登録番号の記入をすべて担当者の注意に頼ることになります。国税庁Q&A問58-2が示すとおり手書きでも適格簡易請求書になりますが、内訳欄や登録番号の書き漏れは、受け取ったお客様の仕入税額控除に関わります。日本カーネットの整備・車販ソフトDREAM POWERのオプション「電子領収証システム」は、入金入力のデータから電子領収証(PDF)を作り、金額、宛名、但し書き、税抜・消費税・合計の内訳、発行者の名称と登録番号を自動で載せます。お客様にはQRコード付きの案内用紙を渡し、スマートフォンで領収証を表示してもらう仕組みです。金額を手で書かないので、書き足しや書き損じの心配がなくなります。
電子で渡す領収証は紙の課税文書を交付しないため、収入印紙は要らないと整理されています。考え方は電子領収書に収入印紙は不要?で説明しています。お客様が紙を希望すれば「紙で発行」も選べますが、その場合は通常どおり5万円以上で印紙が必要です。
整備工場・車販店の領収書を電子化しませんか?
手書きの領収書で金額の書き方や印紙の貼り忘れに気を配る時間を、整備や接客に回しませんか。整備システム・整備ソフト DREAM POWERの入金入力から電子領収証を出す流れを、整備工場・車販店の窓口に合わせてご説明します。
よくある質問
- 手書き領収書の金額は「¥」と「金〇〇円也」のどちらで書けばいいですか?
- どちらでも構いません。領収書の金額の書き方を定めた法令はなく、どちらも数字の前後に書き足しをさせないための書き方です。大事なのは、金額の頭に「¥」か「金」を付けること、末尾を「-」か「也」で閉じること、3桁ごとにカンマを入れることの3点です。国税庁も納付書の記載要領で、合計額の金額頭部に「¥」記号を付けるよう求めています。
- 金額を漢数字で書くとき、大字は必ず使うべきですか?
- 義務ではありません。大字(壱・弐・参・拾など)は、一を二や三に、十を千に書き換えられるのを防ぐための字です。戸籍法施行規則第31条第2項は、戸籍の年月日を記載するには壱、弐、参、拾の文字を用いるよう定めていますが、これは戸籍の規定で、領収書に直接当てはまるものではありません。手書きの領収書ではアラビア数字と「¥」「-」の組み合わせで十分です。
- 書き間違えた金額を二重線と訂正印で直してもいいですか?
- 領収書の訂正方法を定めた法令はありませんが、金額を手で直した領収書は、受け取った側が改ざんを疑われる原因になります。国税庁の納付書の記載要領も、合計額を書き誤ったときは新しい納付書に書き直すよう案内しています。領収書も新しい用紙に書き直し、書き損じた用紙は「書損」と書いて控えと一緒に残すのが安全です。
- 税込55,000円の領収書には収入印紙が必要ですか?
- 書き方で変わります。国税庁タックスアンサーNo.7124によると、消費税額等を区分して書けば消費税額等は記載金額に含めません。「55,000円(うち消費税額等5,000円)」と書けば記載金額は50,000円で、5万円以上なので200円の印紙が要ります。同じ考え方で「52,800円、うち消費税額等4,800円」なら記載金額は48,000円となり非課税です。免税事業者が消費税額を書いても記載金額からは除けません。
- 領収書の日付は和暦と西暦のどちらで書くべきですか?
- どちらでも構いません。領収書の日付の書き方を定めた法令はなく、インボイスの記載事項も「課税資産の譲渡等を行った年月日」とされているだけです。年を省略せず、店内でどちらかに統一しておけば足ります。日付を空欄で渡すと後から書き込まれるおそれがあるので、必ず記入してから渡してください。
- 整備工場や車販店で、領収書の発行を整備・販売の管理とまとめて扱えますか?
- 入金と領収書の発行を別の仕組みで扱うと、金額や宛名の転記ミスが起きやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)の入金入力から領収書を出せば、転記が要りません。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、電子領収証に対応しているかも確かめてください。
参考にした一次情報
- 国税庁 納付書(領収済通知書)の記載要領:https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/pdf/0019004-119.pdf
- 手形法 第6条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/307AC0000000020
- 小切手法 第9条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/308AC0000000057
- 戸籍法施行規則 第31条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 印紙税法 第8条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000023
- 国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂)問25:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
- 国税庁 同Q&A 問58-2(手書きの領収書による適格簡易請求書の交付):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/58-2.pdf
- 国税庁 タックスアンサーNo.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7124.htm
- 国税庁 印紙税額一覧表(令和8年5月22日現在):https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran_r0204.pdf







