「レシートでは経費にならないので、領収書をください」と言われることは、整備工場や車販店の窓口でもよくあります。ただ、税法の上ではレシートと領収書に大きな違いはありません。印紙税ではどちらも「金銭又は有価証券の受取書」で、インボイス制度でも名称は問われません。違いが出るのは、宛名があるか、品目の明細があるかといった中身の部分です。この記事では、印紙税、消費税のインボイス、法人税・所得税の帳簿書類の保存という3つの角度から、レシートと領収書の違いを国税庁の資料と法令で確認しました。
この記事で確認した一次情報
- タックスアンサーNo.7105(国税庁)レシートも第17号文書の受取書に含まれる
- 適格請求書等保存方式に関するQ&A(国税庁・令和8年5月改訂)問25 様式・名称、問111 少額特例、帳簿のみ保存の取引
- 同Q&A 問24・問58(国税庁)適格簡易請求書を交付できる事業と記載事項
- 法人税法施行規則 第59条(e-Gov法令検索)保存する書類に領収書その他これらに準ずる書類
- タックスアンサーNo.5930・No.2070・No.2080(国税庁)法人・青色申告・白色申告の帳簿書類の保存期間
レシートと領収書の違い(法令上の扱い)
レシートと領収書は、どちらも代金を受け取ったことを示す書類で、税法の上では同じ種類の書類として扱われます。国税庁タックスアンサーNo.7105は、印紙税の第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に該当するものとして、受取書、領収証、レシート、預り書を並べて挙げています。消費税のインボイス制度でも、国税庁Q&A問25が「適格請求書の様式は、法令等で定められていません」としたうえで、記載事項を満たす書類であれば請求書、納品書、領収書、レシートなど名称を問わず適格請求書に該当すると説明しています。法人税法施行規則第59条第1項第3号も、保存すべき書類を「領収書、見積書その他これらに準ずる書類」と書いており、名称で線を引いていません。つまり、レシートか領収書かという呼び名より、その紙に何が書かれているかで扱いが決まります。
| 法令・制度 | レシート | 領収書 | 確認した資料 |
|---|---|---|---|
| 印紙税 | 第17号文書の受取書 | 第17号文書の受取書 | タックスアンサーNo.7105 |
| インボイス制度 | 記載事項を満たせば適格請求書・適格簡易請求書 | 同じく記載事項で判断 | Q&A問25・問58 |
| 法人税の書類保存 | 「これらに準ずる書類」として保存 | 「領収書」として保存 | 法人税法施行規則第59条 |
レシートと領収書の記載内容の違い
実務上のレシートと領収書の違いは、記載される項目にあります。レジから出るレシートは、品目ごとの明細、数量、単価、税率ごとの合計が並ぶ一方、宛名は入らないのが普通です。手書きや印刷の領収書は、宛名と「但し書き」で何の代金かをまとめて書く形で、品目の明細は省かれがちです。国税庁Q&A問58に載っているスーパーのレシートの例は、品目に軽減税率対象の印を付け、10%対象と8%対象の金額を分けて書き、登録番号を入れることで適格簡易請求書の記載事項を満たしています。宛名がなくても、小売業などの事業者が出すレシートは適格簡易請求書になり得るということです。反対に、宛名だけ丁寧に書いて但し書きが「お品代」の領収書は、何を買ったのかが分からず、経費の説明では明細の載ったレシートのほうが役に立つこともあります。
| 項目 | レジのレシート | 手書き・印刷の領収書 |
|---|---|---|
| 宛名 | 入らないことが多い | 入れる(上様のこともある) |
| 品目の明細 | 1品ずつ載る | 但し書きでまとめることが多い |
| 税率ごとの金額 | レジが自動で計算して印字 | 手書きでは書き漏れが起きやすい |
| 登録番号 | レジの設定で印字 | ゴム印や印刷で入れる |
| 発行の手間 | 会計と同時に自動 | お客様に頼まれてから作る |
宛名と但し書きの書き方は、領収書の宛名の書き方と領収書の但し書きの書き方で詳しく扱っています。
経費で通るのはレシートと領収書のどっち?
経費の証拠として通るかどうかは、レシートか領収書かという名称では決まりません。法人税法施行規則第59条第1項は、青色申告法人に、帳簿のほか「取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」を保存するよう定めています。所得税でも、国税庁タックスアンサーNo.2080は、業務に関して作成し、または受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類を保存の対象としています。大事なのは、いつ、どこに、何の代金を、いくら払ったかが後から確かめられることで、その点では品目の明細が載ったレシートのほうが情報は多くなります。宛名のないレシートを社員が立て替えて使った場合は、誰が何のために使ったかを経費精算書に書き添えておくと、帳簿との対応が付けやすくなります。個別の支出を経費にできるかどうかは、支出の中身で判断されるので、迷うときは顧問税理士に確認してください。
消費税の仕入税額控除で必要な書類
消費税の仕入税額控除は、法人税の経費とは別のルールです。国税庁Q&Aによると、適格請求書等保存方式では、一定の事項を記載した帳簿と請求書等の保存が控除の要件になり、保存すべき請求書等には適格簡易請求書も含まれます。適格簡易請求書を交付できるのは、Q&A問24によると小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定かつ多数の者に対するもの)と、これらに準ずる事業です。記載事項は、発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計額、消費税額等か適用税率のどちらか一方で、宛名は要りません(問58)。
- 請求書等がなくても、一定の事項を書いた帳簿だけで控除できる取引がある。例は3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)の運賃、3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入、従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費など
- 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの1万円未満(税込み)の課税仕入れを、帳簿のみの保存で控除できる(少額特例・Q&A問111)
- それ以外の課税仕入れは、適格請求書か適格簡易請求書、またはその電磁的記録の保存が必要
レシートと領収書の保存期間
レシートも領収書も、帳簿書類として同じ期間保存します。法人の場合、国税庁タックスアンサーNo.5930によると、帳簿と取引に関して作成・受領した書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは10年間です。個人事業者は申告の種類で変わり、青色申告者はタックスアンサーNo.2070で原則7年、書類によっては5年でよいとされ、5年でよい例として請求書、見積書、納品書、送り状が挙げられています。白色申告者はタックスアンサーNo.2080で、記帳制度に基づいて作成した帳簿が7年、業務に関して作成・受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類が5年です。感熱紙のレシートは時間がたつと文字が薄くなるので、保存期間の終わりまで読める状態を保つ工夫が要ります。
| 区分 | 帳簿 | 領収書・レシートなどの書類 | 確認した資料 |
|---|---|---|---|
| 法人 | 7年(欠損金が生じた事業年度などは10年) | 7年(同上) | タックスアンサーNo.5930 |
| 個人(青色申告) | 7年 | 原則7年(5年でよい書類もある) | タックスアンサーNo.2070 |
| 個人(白色申告) | 7年(記帳制度に基づく帳簿) | 5年 | タックスアンサーNo.2080 |
保存期間の数え方や電子データで受け取ったレシートの保存方法は、電子帳簿保存法で領収書はどうする?もあわせて確認してください。
整備工場・車販店でのレシートと領収書の使い分け
整備工場や中古車販売店では、自分が出す側と受け取る側の両方でレシートと領収書を扱います。出す側では、オイル交換や部品の店頭販売のように会計がその場で済む取引はレジのレシート、車検や鈑金修理、車両販売のように法人のお客様から宛名入りを求められやすい取引は領収書、と分けて運用する方法があります。どちらで出しても、売上代金の受取金額が5万円以上なら印紙税がかかる点は変わりません。国税庁の印紙税額一覧表では、100万円以下は200円、100万円を超え200万円以下は400円で、売上代金には手付けも含むとされています。受け取る側では、工具や消耗品を量販店で買ったときのレシートがそのまま経費とインボイスの証拠になります。登録番号の有無と、10%と8%の区分が印字されているかを、受け取った時点で確かめておくと後の手間が減ります。
| 場面 | 出す書類の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| オイル交換・部品の店頭販売 | レジのレシート | 登録番号と税率ごとの金額を印字する設定にする |
| 車検整備(法人のお客様) | 宛名入りの領収書 | 5万円以上なら収入印紙。消費税額等を区分して書く |
| 中古車販売の手付金 | 受取書・領収書 | 印紙税では売上代金に手付けを含む |
| レシートの後で領収書を頼まれた | 領収書 | レシートを回収するか、2枚目と分かる記載をする |
| 工具・消耗品の購入(受け取る側) | 量販店のレシート | 登録番号と税率区分の印字を確認して保存 |
レシートを渡した後に「やはり領収書を」と頼まれたら、同じ支払いに受取書が2枚出回らないよう、レシートと引き換えにするのが無難です。クレジットカード払いの場合の扱いは別記事で取り上げます。
電子レシート・電子領収書という選択肢
レシートや領収書は、紙で渡すほかに電子データで渡すこともできます。国税庁Q&A問24は、適格簡易請求書について、その交付に代えて記載事項に係る電磁的記録を提供できるとしています。印紙税についても、国税庁の質疑応答事例が、課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしています。この事例は注文請書を電子メールで送った場合についての回答で、紙を交付しない電子の受取書も同じ考え方で整理されています。日本カーネットの整備・車販ソフトDREAM POWERのオプション「電子領収証システム」では、入金入力から電子領収証(PDF)を作り、お客様にはQRコード付きの案内用紙を渡します。領収証には宛名、但し書き、税抜・消費税・合計の内訳、登録番号が載るので、レシートの明細性と領収書の宛名を1枚で兼ねられます。
発行した領収証はWEB管理システムに自動で保存され、顧客名、顧客CD、領収証番号、発行日で検索して再表示できます。レシートをなくしたお客様から再発行を頼まれた場面でも、控えの束を探す必要がありません。お客様が紙を希望する場合は「紙で発行」も選べますが、そのときは紙の受取書として5万円以上で印紙が要ります。電子で渡した領収証の控えは、電子帳簿保存法の電子取引データとして保存する必要がある点にも注意してください。
整備工場・車販店の領収書を電子化しませんか?
「レシートでなく領収書を」と頼まれるたびに書き直している窓口なら、宛名と明細を1枚にまとめた電子領収証で手間を減らせます。整備システム・整備ソフト DREAM POWERの入金入力からの発行と、WEBでの履歴検索をデモでご確認いただけます。
よくある質問
- レシートと領収書は法律上どう違いますか?
- 法律上の大きな違いはありません。印紙税では、国税庁タックスアンサーNo.7105が、受取書・領収証・レシート・預り書などを第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に含めています。インボイス制度でも、国税庁Q&A問25が、記載事項を満たせば請求書・納品書・領収書・レシートなど名称を問わず適格請求書に該当するとしています。違いが出るのは書かれている中身です。
- 経費にするにはレシートでなく領収書が必要ですか?
- 名称で決まるわけではありません。法人税法施行規則第59条第1項第3号は、保存する書類として「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」を挙げています。品目や日付、支払先が分かるレシートは、取引の内容を示す書類として領収書以上に情報が多いこともあります。個別の経費の扱いに迷うときは顧問税理士に確認してください。
- レシートでも消費税の仕入税額控除を受けられますか?
- 受けられる場合があります。小売業や飲食店業など適格簡易請求書を交付できる事業者が出す、登録番号などの記載事項を満たしたレシートは適格簡易請求書にあたり、仕入税額控除のために保存する請求書等に含まれます(国税庁Q&A問24・問58)。また、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、令和11年9月30日までの1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で控除できる経過措置(少額特例)があります(Q&A問111)。
- 5万円以上のレシートに収入印紙は必要ですか?
- 必要です。レシートも印紙税では第17号文書の受取書にあたるので、売上代金の受取金額が5万円以上なら、100万円以下で200円などの印紙税がかかります(国税庁 印紙税額一覧表)。消費税額等が区分して書かれていれば、その消費税額等は記載金額に含めません。営業に関しない受取書は非課税です。
- レシートと領収書の両方を渡してもいいですか?
- 渡すこと自体を禁じる規定は、この記事で確認した資料にはありません。ただ、同じ支払いに受取書が2枚あると、受け取った側で二重に経費計上される原因になります。店としては、領収書を出すときにレシートを回収する、領収書に「レシート分」と書くなど、2枚目であることが分かる運用を決めておくのが安全です。
- 整備工場や車販店で、領収書の発行を整備・販売の管理とまとめて扱えますか?
- 入金と領収書の発行を別の仕組みで扱うと、金額や宛名の転記ミスが起きやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)の入金入力から領収書を出せば、転記が要りません。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、電子領収証に対応しているかも確かめてください。
参考にした一次情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
- 国税庁 印紙税額一覧表(令和8年5月22日現在):https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran_r0204.pdf
- 国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂)問25・問111ほか:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
- 国税庁 同Q&A 問24(適格簡易請求書の交付ができる事業):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/24.pdf
- 国税庁 同Q&A 問58(適格簡易請求書の記載事項):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/58.pdf
- 法人税法施行規則 第59条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040012
- 国税庁 タックスアンサーNo.5930 帳簿書類等の保存期間:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.2070 青色申告制度:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htm







