「領収書」と「領収証」は、どちらが正しいのか。車検の精算で法人のお客様から「領収証でお願いします」と言われ、手元の綴りが「領収書」だったとき、窓口で迷った経験があるかもしれません。結論から書くと、税法上の扱いに違いはありません。国税庁のタックスアンサーは、領収証もレシートも預り書も、すべて印紙税法の「金銭又は有価証券の受取書」に当たると説明しています。この記事では、法令ごとの呼び方の違い、名称が変わっても受取書になる文書の範囲、車業界で間違えやすい預り証や入金済スタンプの扱いを、一次情報で確かめながら整理します。
この記事で確認した一次情報
- No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(国税庁タックスアンサー)受取書の意義、名称の例、売上代金の受取書の税額、営業に関しない受取書
- 印紙税法基本通達 第2節(国税庁)第3条 課税文書に該当するかどうかの判断(名称によらず実質で判断)
- 印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書(国税庁)金銭又は有価証券の受取書の意義、仮受取書、振込済みの通知書、お買上票
- 印紙税法(e-Gov法令検索)第2条、第3条、別表第一 第17号
- 民法(e-Gov法令検索)第486条 受取証書の交付請求等
領収書と領収証の違い
領収書と領収証の違いは表記だけで、税法上の扱いは同じです。国税庁のタックスアンサーNo.7105(令和8年4月1日現在法令等)は、受取書を「その受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書」と定義したうえで、「受取書」「領収証」「レシート」「預り書」はもちろん、請求書や納品書に「代済」「相済」「了」と書いたものも受取書に当たるとしています。さらに印紙税法基本通達第3条は、課税文書に当たるかどうかを、文書の名称や形式的な記載文言によらず、記載文言の実質的な意義に基づいて判断すると定めています。つまり、表題が「領収書」でも「領収証」でも、お金を受け取った事実を証明する目的で相手に渡す紙は、印紙税法別表第一の第17号文書として同じ税額表で判定されます。整備工場や中古車販売店が手元の綴りの表記を気にして書き直す必要はありません。
違いが出るのは、名称でなく中身です。記載された受取金額が5万円以上か、受け取ったお金が売上代金か、営業に関するものか。この3つで印紙税の有無と金額が決まります。
窓口での答え方
「領収証で」と頼まれたら、手元の領収書をそのまま発行して差し支えありません。お客様が気にしているのは表題よりも、宛名、但し書き、金額、発行者の記載がそろっているかどうかです。宛名と但し書きの書き方は宛名の記事と但し書きの記事で詳しく扱っています。
法令での呼び方の違い(受取書・受取証書・領収書)
法令の中でも、領収書の呼び方は法律ごとに異なります。印紙税法は別表第一第17号で「金銭又は有価証券の受取書」と書き、民法第486条は「受取証書」と呼んでいます。一方、法人税法施行規則第59条第1項第3号や電子帳簿保存法第2条第5号は、保存すべき書類の例として「領収書」と書いています。「領収証」という表記を条文で使っている法律は、この記事で確認した範囲には見当たりませんでした。それでも国税庁は領収証を受取書の例として挙げているので、どの表記を使っても税務上の扱いは変わりません。民法第486条は、お金を払う側が受け取る側に受取証書の交付を請求できると定め、第2項で、受け取る側に不相当な負担を課す場合を除き、交付に代えて電磁的記録の提供を請求できるとしています。紙の領収書も電子の領収証も、民法上は同じ受取証書の役割を果たします。
| 法令 | 条文での呼び方 | その条文が決めていること |
|---|---|---|
| 印紙税法 別表第一 第17号 | 金銭又は有価証券の受取書 | 印紙税の課税対象と税額 |
| 民法 第486条 | 受取証書 | 支払う側が交付を請求できること。第2項で電磁的記録の提供の請求 |
| 法人税法施行規則 第59条 | 領収書 | 青色申告法人が保存する書類の範囲と保存期間 |
| 電子帳簿保存法 第2条第5号 | 領収書 | 電子取引で授受する「取引情報」の範囲 |
| 国税庁タックスアンサー No.7105 | 受取書、領収証、レシート、預り書 | いずれも第17号文書に当たるという説明 |
この表を見ると、条文の呼び方は「何を決める条文か」で選ばれていることがわかります。印紙税は紙の文書そのものに着目するので「受取書」、民法は支払った人の権利を定めるので「受取証書」、保存のルールは帳簿書類の種類を並べるので「領収書」です。現場で使う名称は、どれに合わせても問題ありません。
領収書・領収証の印紙税(第17号文書の税額)
領収書と領収証の印紙税は、印紙税法別表第一の第17号文書として同じ表で判定します。売上代金に係る受取書(第17号の1文書)の場合、記載された受取金額が5万円未満なら非課税、5万円以上100万円以下は200円、100万円を超え200万円以下は400円、200万円を超え300万円以下は600円、300万円を超え500万円以下は1,000円、500万円を超え1,000万円以下は2,000円、1,000万円を超え2,000万円以下は4,000円です。売上代金とは、資産を譲渡したり使用させたりした対価、役務を提供した対価のことで、手付けも含みます。車検や修理の代金は役務の提供の対価、中古車や部品の代金は資産の譲渡の対価なので、どちらも売上代金に当たります。売上代金以外の受取書(第17号の2文書)は、5万円以上なら一律200円です。営業に関しない受取書は非課税で、タックスアンサーは会社や個人の商人の行為を営業に当たるとしています。
| 記載された受取金額(売上代金) | 印紙税額(1通) | 車業界で多い場面 |
|---|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 | オイル交換、タイヤ交換、小さな部品販売 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 | 車検、法定点検と整備、一般修理 |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 | 大きな鈑金修理、中古車の販売 |
| 200万円を超え300万円以下 | 600円 | 中古車の販売 |
| 300万円を超え500万円以下 | 1,000円 | 車両販売 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 | 高額車両の販売 |
| 1,000万円を超え2,000万円以下 | 4,000円 | 複数台をまとめた販売 |
消費税の書き方にも注意が要ります。タックスアンサーNo.7124によると、消費税の課税事業者が受取書に消費税額等を区分して書くか、税込価格と税抜価格の両方を書いた場合、消費税額等は記載金額に含めません。国税庁の例では「商品販売代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」と書いた領収書は記載金額48,000円となり、非課税文書です。税込の合計だけを書くと52,800円で判定されます。車検の諸費用のうち整備代金だけを領収する場面など、5万円前後の金額では書き方ひとつで印紙の要否が分かれます。
消費税の免税事業者が「消費税額等」として金額を区分して書いても、その金額は記載金額に含まれます(タックスアンサーNo.7124の注)。印紙税額の一覧と金額別の判断は収入印紙はいくらから必要?にまとめています。
名前が違っても受取書になる文書(預り証・入金済の請求書など)
表題に「領収書」も「領収証」も書いていない文書でも、受取書として印紙税の対象になる場合があります。印紙税法基本通達の別表第一第17号文書の1は、受取書を「金銭又は有価証券の引渡しを受けた者が、その受領事実を証明するため作成し、その引渡者に交付する単なる証拠証書」と定め、注で、表題や形式がどのようなものでも、「相済」「完了」などの簡略な文言でも、作成目的が受領事実の証明なら第17号文書に当たると明記しています。同じ通達は、仮受取書と称する文書(3)、口座への入金を知らせる「振込済みのお知らせ」(4)、現金販売で渡すお買上票のうち受領事実が明らかなもの(10)も受取書に当たるとしています。反対に、手形割引料計算書のように、間接的に受領事実がわかっても作成目的が別の文書は第17号文書に当たりません(5)。名称で判断せず、何のために渡す紙かで判断する、というのが一貫した考え方です。
車検・整備・中古車販売で間違えやすい例
- 中古車の注文時に手付金10万円を受け取り、「預り証」を渡す。手付けは売上代金に含まれ、預り書も受取書の例に挙がっているため、第17号の1文書として200円の印紙が要ります。
- 車検の請求書に「入金済」「済」のスタンプを押して、精算時にお客様へ渡す。受取事実を証明する目的なら受取書に当たり、金額が5万円以上なら印紙の対象です。
- 法人のお客様から振込で鈑金代金を受け取り、「ご入金ありがとうございました」と金額入りの書面を送る。通達の「振込済みのお知らせ」と同じ扱いで、第17号文書に当たります。
- 代車の貸出時に預かった保証金を返さない約束がない場合、その受取書は売上代金以外の受取書(第17号の2)として、5万円以上なら200円です。
最後の例の保証金は、通達の第17号文書の15で、担保としての保証金が売上代金に当たらないと示されていることに基づきます。ただし、後日返還しない部分がある敷金や保証金は、同じ通達の13で売上代金に含まれるとされています。預かり方の約束によって税額が変わるため、迷うときは所轄の税務署に確認してください。
領収証を電子で渡す場合の印紙税
領収証を紙で渡さず、PDFなどの電子データで渡す場合、収入印紙は要りません。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれないため課税されない、と回答しています。また、印紙税法基本通達第44条は、課税文書の「作成」を、用紙に課税事項を記載して文書の目的に従って行使することと定め、相手方に交付する目的の文書は交付の時に作成されたことになるとしています。国税庁の質疑応答事例「受取書の作成の時」も同じ考え方で、郵送する受取書は相手に発信した時が作成の時になると説明しています。紙を渡さなければ課税文書の作成が起きない、という整理です。領収書でも領収証でも、この結論は同じです。
注意したいのは、電子で渡したあとに同じ内容を紙に印刷して交付するケースです。紙を交付した時点で受取書の作成になるため、5万円以上なら印紙が必要です。窓口で紙を求められたときのルールを社内で決めておきましょう。電子領収書と印紙の関係は電子領収書に収入印紙は不要?、印刷との関係は電子領収書は印刷してもいい?で詳しく説明しています。
整備工場・車販店の領収書を電子化しませんか?
整備システム・整備ソフト DREAM POWERの電子領収証システムは、いつもの入金入力から電子領収証(PDF)を作り、QRコード付きの案内用紙をお渡しするだけで受け渡しが終わります。発行時に「紙で発行」と「電子で発行」を選べるので、紙を希望するお客様にも対応できます。車検や鈑金の会計で5万円を超える領収証が多い工場ほど、印紙と手書きの手間が減ります。
領収書と領収証の表記を社内で統一する方法
表記はどちらでもよい以上、社内でそろえることが実務上の課題になります。おすすめは、会計ソフトや整備システムが出力する帳票の表題に合わせることです。手書きの綴りが「領収書」、システムの帳票が「領収証」と混在していると、お客様から「別の書類ですか」と聞かれたり、再発行の依頼で番号を照合するときに迷ったりします。たとえば、日本カーネットの電子領収証システムでは、お客様のスマートフォンに表示されるPDFの見出しが「領収証」で、窓口でお渡しする紙は「電子領収証発行のご案内」という別の表題です。案内用紙には「本紙は領収証ではありません」と注記されているので、お客様が案内用紙を領収証と取り違えることを防げます。表題を決めたら、受付で使う説明の言葉もそれに合わせましょう。
- システム帳票、手書きの綴り、ゴム印の表記を一つにそろえる
- 再発行した領収証には、元の領収証番号と再発行である旨を残す
- 「預り証」「仮領収証」など別名の書類を使うなら、印紙の扱いを受付マニュアルに書く
- 請求書に入金済スタンプを押して渡す運用は、金額によって印紙が必要になることを周知する
再発行の運用は再発行・宛名・但し書きの実務Q&Aも参考にしてください。
よくある質問
- 「領収書」と「領収証」で、印紙税の金額は変わりますか?
- 変わりません。国税庁のタックスアンサーNo.7105は、「受取書」「領収証」「レシート」「預り書」のいずれも印紙税額一覧表の第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に当たると説明しています。税額は名称でなく、記載された受取金額と、売上代金かどうかで決まります。売上代金の受取書なら、5万円未満は非課税、5万円以上100万円以下は200円です。
- 「預り証」と書けば、収入印紙を貼らなくてよいのですか?
- 名称を変えても扱いは変わりません。印紙税法基本通達第3条は、課税文書かどうかを文書の名称や形式的な文言でなく、記載文言の実質的な意義で判断するとしています。タックスアンサーNo.7105も「預り書」を受取書の例に挙げています。中古車の手付金を預かって「預り証」を渡す場合、手付けは売上代金に含まれるため、5万円以上なら第17号の1文書として印紙税の対象になります。
- 請求書に「入金済」のスタンプを押して渡すと、領収書の扱いになりますか?
- タックスアンサーNo.7105は、受取事実を証明するために請求書や納品書に「代済」「相済」「了」などと記入したものも受取書に当たるとしています。入金済のスタンプも、金銭を受け取った事実を証明する目的で押して渡すなら同じ考え方になります。5万円以上の車検費用の請求書に押して渡すときは、印紙が必要かどうかを確認してください。
- 会社の書類では「領収書」と「領収証」のどちらに統一すべきですか?
- 法令はどちらかの表記を求めていません。法人税法施行規則第59条や電子帳簿保存法第2条は「領収書」と書いていますが、印紙税法は「受取書」、民法第486条は「受取証書」です。社内の伝票や電子領収書のテンプレートでは、どちらか一方に決めて表記をそろえておくと、問い合わせや検索の手間が減ります。
- 電子で渡す領収証にも、名称のルールはありますか?
- 名称のルールはありません。印紙税は紙の文書に課される税で、国税庁の質疑応答事例は電磁的記録が課税物件表の「文書」に含まれないと回答しています。電子領収書と呼んでも電子領収証と呼んでも、PDFなどのデータで渡すかぎり収入印紙は貼りません。ただし、同じ内容を紙に印刷して交付すると紙の受取書の扱いになります。
- 整備工場や車販店で、領収書の発行を整備・販売の管理とまとめて扱えますか?
- 入金と領収書の発行を別の仕組みで扱うと、金額や宛名の転記ミスが起きやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)の入金入力から領収書を出せば、転記が要りません。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、電子領収証に対応しているかも確かめてください。
参考にした一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7124.htm
- 国税庁 印紙税法基本通達 第2節 文書の意義等(第3条):https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/02.htm
- 国税庁 印紙税法基本通達 第7節 作成者等(第44条):https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/07.htm
- 国税庁 印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/betsu01/07.htm
- 国税庁 質疑応答事例 受取書の作成の時:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/11.htm
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htm
- e-Gov法令検索 印紙税法:https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000023
- e-Gov法令検索 民法(第486条):https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 法人税法施行規則(第59条):https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040012
- e-Gov法令検索 電子帳簿保存法(第2条):https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025







