「領収書はPDFでメールしてもらえますか」。法人のお客様の車検や、リース車両の修理代を精算するとき、経理担当者からこう頼まれる機会が増えています。領収書をPDFにしてメールで送ることは、法令上問題ありません。民法は支払う側が受取証書の電子での提供を請求できると定め、消費税法も適格請求書の交付に代えて電子データを提供できるとしています。紙を渡さないので収入印紙も要りません。一方で、送った側にもデータの保存義務があり、紙を重ねて渡すと印紙がかかるなど、気をつける点もあります。この記事では、国税庁の質疑応答事例と電子帳簿保存法の一問一答をもとに、送り方の手順と注意点をまとめます。
この記事で確認した一次情報
- 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁 質疑応答事例)電磁的記録は課税物件表の文書に含まれない
- 注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係(福岡国税局 文書回答事例)平成20年10月24日回答。現物を別途交付すれば課税
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月(国税庁)問1、問2、問4、問30、問31、問48、問51
- 民法(e-Gov法令検索)第486条 受取証書の交付請求等
- 消費税法(e-Gov法令検索)第57条の4 第5項(電磁的記録の提供)、第6項(保存)
領収書をPDF・メールで送ってもよいか
領収書はPDFにしてメールで送ってかまいません。根拠は3つあります。1つ目は民法第486条です。第1項で弁済をする者は受取証書の交付を請求でき、第2項で、受け取る側に不相当な負担を課す場合を除き、交付に代えて内容を記録した電磁的記録の提供を請求できるとしています。2つ目は消費税法第57条の4第5項で、適格請求書発行事業者は、適格請求書や適格簡易請求書の交付に代えて電磁的記録を提供できると定めています。3つ目は電子帳簿保存法で、第2条第5号が領収書に通常記載される事項を「取引情報」とし、国税庁の一問一答【電子取引関係】問2は、電子メールで取引情報を授受する取引を、添付ファイルによる場合も含めて「電子取引」と説明しています。法律は電子で送る領収書を想定したうえで、その保存のルールまで用意しているわけです。整備工場が法人のお客様に車検代金の領収書をPDFで送っても、領収書としての役割は紙と変わりません。
| 法令・資料 | PDFやメールの領収書について決めていること |
|---|---|
| 民法 第486条第2項 | 支払う側は、受取証書の交付に代えて電磁的記録の提供を請求できる |
| 消費税法 第57条の4第5項 | 適格請求書等の交付に代えて電磁的記録を提供できる |
| 電子帳簿保存法 第2条第5号、第7条 | メールなどで領収書の取引情報を授受すると電子取引になり、データで保存する |
| 国税庁 質疑応答事例(印紙税) | 電磁的記録は文書に含まれず、印紙税は課税されない |
PDF・メールで送った領収書の印紙税
PDFの領収書をメールで送る場合、収入印紙は要りません。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、印紙税の課税対象は課税物件表の物件名欄に掲げられている文書で、電磁的記録は文書に含まれないため課税されない、と回答しています。福岡国税局の文書回答事例(平成20年10月24日回答)も、注文請書の現物の交付に替えてPDFファイルを電子メールで送信した場合に課税文書を作成したことにはならない、という照会者の見解を「貴見のとおりで差し支えありません」としています。照会の別紙では、印紙税法基本通達第44条が課税文書の「作成」を文書の目的に従って行使すること、交付する文書については交付の時と定めている点が理由に挙げられています。領収書は印紙税法別表第一の第17号文書で、記載金額5万円以上100万円以下の売上代金の受取書なら紙では200円です。
同じ文書回答事例の別紙には、電子メールで送信した後に現物を別途持参するなどの方法で相手方に交付した場合は課税文書の作成に該当し、現物に印紙税が課されると書かれています。PDFを送ったうえで紙も手渡すと、紙の方に印紙が必要です。また、文書回答事例は照会された事実関係を前提とした福岡国税局の見解で、事実関係が異なる場合は異なる課税関係が生じることがあると注記されています。
郵送する紙の領収書は、国税庁の質疑応答事例「受取書の作成の時」によると、相手に発信した時が作成の時です。PDFに変換した領収書をメールで送る方法なら、紙の発信そのものがありません。車検や鈑金修理の多くは5万円以上100万円以下の帯に入るため、メールでの送付に切り替えると、その分の印紙代がかかりません。電子領収書と印紙の関係は電子領収書に収入印紙は不要?でも詳しく説明しています。
領収書をPDFにしてメールで送る手順
領収書をPDFにしてメールで送る手順は、記載事項をそろえる、PDFに変換する、宛先と添付を確かめて送る、送ったデータを保存する、の4段階です。最初に、宛名、日付、金額、但し書き、発行者の名称を紙の領収書と同じように載せます。インボイスの登録事業者なら、登録番号、税率ごとに区分した金額と消費税額等も必要です。次に、会計ソフトや整備システムの帳票出力、表計算ソフトの「PDFとして保存」などでPDFにします。編集できるファイル形式のまま送ると、受け取った側で書き換えられるおそれがあるため、PDFにしてから送るのが一般的です。ファイル名には発行日、領収書番号、お客様名を入れておくと、後で探すときに役立ちます。送信前には宛先のアドレスと添付ファイルが正しいかを確かめ、送ったPDFを社内の決めた場所に保存します。最後の保存は、電子帳簿保存法で求められる手順です。
メール本文の例(法人のお客様の車検代金)
件名:【○○自動車】車検費用の領収書送付(領収書番号 1234)
株式会社△△ 経理ご担当者様
いつもお世話になっております。○○自動車の□□です。10月3日にお預かりした社用車(品川300あ1234)の車検費用につきまして、領収書をPDFでお送りします。
添付ファイル:20261003_領収書1234_株式会社△△.pdf
金額:165,000円(うち消費税額等15,000円)
本メールで領収書をお送りしましたので、紙の領収書は発行しておりません。紙が必要な場合はお知らせください。
本文に「紙は発行していない」と一文入れておくと、お客様の側でも二重に受け取ったかどうかを確認でき、紙を追加で求められたときの判断もしやすくなります。記載事項の詳細は領収書の書き方とインボイス制度に対応した領収書の書き方を参照してください。
PDFの領収書を送った側の保存ルール
PDFの領収書をメールで送った側も、送ったデータを電子のまま保存する義務があります。電子帳簿保存法第7条は、所得税と法人税の保存義務者が電子取引を行った場合に、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないと定めています。国税庁の一問一答【電子取引関係】問1の解説は、所得税法と法人税法が相手方から受け取った領収書等だけでなく、相手方に交付した書類の写しの保存も定めていることを前提に、電子取引で授受した場合はデータで保存すると説明しています。保存するのはメール全体でなく、領収書のPDFでかまいません。問4は、添付ファイルで取引情報を授受した場合は当該添付ファイルを保存すればよいとしています。保存の際には、問30のとおり、タイムスタンプ、訂正削除の記録が残るか訂正削除できないシステム、訂正削除の防止に関する事務処理規程のいずれかで改ざん防止の措置を取り、取引年月日、取引金額、取引先で検索できる状態にします(問48)。
- 送ったPDFを、送信済みメールの中に置いたままにせず、決めたフォルダやシステムに保存する
- ファイル名や索引簿で、日付、金額、取引先を検索できるようにする
- 事務処理規程を選ぶ場合は、規程を作って社内に周知し、その規程を備え付ける
- インボイスの登録事業者は、提供した電磁的記録を7年間保存する(消費税法施行令第70条の13)
検索機能の要件には緩和があります。一問一答の問48と問51によると、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしていて、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索機能の要件がすべて不要です。保存期間は紙と同じで、法人なら原則7年です。期間の詳細は領収書の保管期間は7年?10年?で、電子帳簿保存法の全体像は電子帳簿保存法で領収書はどうする?で説明しています。
整備工場・車販店でPDFの領収書を送る場面
整備工場や車販店で領収書をPDFで送る場面は、法人のお客様の精算に多く見られます。社用車の車検、点検整備、鈑金修理の代金を振込で受け取ったあと、お客様の経理担当者に領収書を送る場合です。車検費用が5万円を超えることは珍しくないため、紙で発行すれば1通200円の印紙が必要ですが、PDFをメールで送れば要りません。中古車販売では金額がさらに大きくなります。印紙税法別表第一の税額表では、記載金額100万円を超え200万円以下の売上代金の受取書は400円、200万円を超え300万円以下は600円です。注文時の手付金と納車時の残金で2回領収書を出す販売店なら、2通とも電子にできます。手付けも売上代金に含まれる点は、国税庁のタックスアンサーNo.7105で確認できます。個人のお客様には、メールアドレスを聞き取る手間や、迷惑メールのフォルダに入ってしまうおそれもあるため、窓口ですぐ受け取れる方法を用意しておくと使い分けられます。
| 場面 | 紙で渡す場合の印紙(売上代金) | PDFで送る場合 |
|---|---|---|
| 法人の社用車の車検代金 16.5万円(消費税額等を区分記載) | 記載金額15万円で200円 | 不要 |
| 保険修理の自己負担分 3万円 | 5万円未満で非課税 | 不要 |
| 中古車の手付金 10万円 | 200円 | 不要 |
| 中古車の残金 180万円 | 400円 | 不要 |
表の金額は説明のための例です。印紙税額は、消費税の課税事業者が消費税額等を区分して記載した場合、税抜の金額で判定します。
整備工場・車販店の領収書を電子化しませんか?
整備システム・整備ソフト DREAM POWERの電子領収証システムは、いつもの入金入力から電子領収証(PDF)を発行し、QRコード付きの案内用紙を窓口でお渡しする方式です。お客様はスマートフォンのカメラでQRコードを読み取るだけで、領収証のPDFを表示でき、保存やメールでの転送もご自身でできます。メールアドレスを聞き取らずに電子で渡せるので、個人のお客様が多い工場でも始めやすい方法です。
PDF・メールで領収書を送るときの注意点
PDFやメールで領収書を送るときに気をつける点は、紙を求められた場合の対応、二重発行、誤送信、送った側のデータ管理の4つです。民法第486条第1項はお客様が受取証書の交付を請求できると定めているので、紙を求められたら紙で発行するのが基本です。その場合、記載金額が5万円以上なら紙の領収書に印紙を貼ります。同じ取引についてPDFと紙の両方を発行すると、紙の方が課税文書になるだけでなく、二重に経費計上されるおそれもあります。紙を後から発行するときは、PDFと同じ領収書番号を使い、再発行の扱いであることを残しておきましょう。誤送信は、宛先の選択ミスで別のお客様に金額や車両の情報が届いてしまう事故です。送信前に宛先を確かめる手順を入れておきます。最後に、担当者個人のメールソフトにしか送信記録が残らない状態は避けます。担当者が休んだり退職したりすると、再発行の依頼に答えられなくなるためです。
QRコードで渡す電子領収証システムの場合、WEB管理システムの発行履歴に、発行日、領収証番号、顧客、発行者(拠点・担当者)、金額が残ります。顧客名や領収証番号、発行日で検索して、PDFと案内状をその場で再表示、再印刷できます。なお、この製品の説明にメールの自動送信機能は記載されていません。お客様のアドレスに送る運用を希望する場合は、ご相談の際にお問い合わせください。
よくある質問
- 領収書をPDFにしてメールで送れば、収入印紙は貼らなくてよいのですか?
- 国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれないため課税されないと回答しています。5万円以上の車検代金の領収書でも、PDFをメールで送るだけなら印紙は要りません。ただし、同じ内容の紙を別に交付すると、その紙が課税文書になります。
- PDFで送った領収書の控えは、印刷して保存すればよいですか?
- 所得税と法人税では、印刷した紙だけの保存は認められません。電子帳簿保存法第7条により、電子取引の取引情報は電磁的記録のまま保存します。国税庁の一問一答【電子取引関係】問1の解説は、相手方に交付した領収書等の写しも保存義務の対象と説明しています。送ったPDFを要件どおり保存したうえで、事務の都合で印刷して綴じることは問31で問題ないとされています。
- お客様から「紙の領収書がほしい」と言われたら、断ってもよいですか?
- 民法第486条第1項は、弁済をする者が弁済と引換えに受取証書の交付を請求できると定めています。電子での提供は第2項でお客様が請求できるものとされているので、紙を求められたら紙で発行する運用が無難です。紙を交付した場合は、記載金額が5万円以上なら収入印紙が必要になります。
- メール本文に金額を書いて送るだけでも、領収書の代わりになりますか?
- 国税庁の一問一答【電子取引関係】問4によると、メール本文に取引情報が記載されている場合はそのメールが保存対象になります。ただし、本文だけでは宛名や但し書き、発行者の記載がそろわず、お客様の経理で使いにくくなります。必要な事項を載せた領収書をPDFにして添付する方法をおすすめします。
- インボイスの登録事業者は、PDFの領収書をどれくらい保存しますか?
- 消費税法第57条の4第5項は、適格請求書等の交付に代えて電磁的記録を提供できると定め、第6項と消費税法施行令第70条の13は、提供した電磁的記録を、提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存するとしています。法人税で10年の保存が必要な年は、そちらの期間に合わせます。
- 整備工場や車販店で、領収書の発行を整備・販売の管理とまとめて扱えますか?
- 入金と領収書の発行を別の仕組みで扱うと、金額や宛名の転記ミスが起きやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)の入金入力から領収書を出せば、転記が要りません。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、電子領収証に対応しているかも確かめてください。
参考にした一次情報
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htm
- 福岡国税局 文書回答事例 請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について:https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/01.htm
- 福岡国税局 文書回答事例(別紙):https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/02.htm
- 国税庁 印紙税法基本通達 第7節 作成者等(第44条):https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/07.htm
- 国税庁 質疑応答事例 受取書の作成の時:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/11.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
- e-Gov法令検索 民法(第486条):https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 消費税法(第57条の4):https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
- e-Gov法令検索 消費税法施行令(第70条の13):https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360
- e-Gov法令検索 電子帳簿保存法(第2条、第7条):https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025
- e-Gov法令検索 電子帳簿保存法施行規則(第4条):https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043
- 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf







