売買契約書に印紙は必要?中古車の売買契約書と不動産・継続取引の違い

中古車販売店では、1台売るたびに注文書や売買契約書を交わします。そこに収入印紙を貼るべきか迷った経験はないでしょうか。先に答えを書くと、自動車1台の売買契約書は印紙税の課税文書に当たりません。ところが同じ「売買契約書」でも、店舗の土地や建物を買う契約書には印紙が要り、業者同士で交わす継続取引の基本契約書にも別の税額がかかります。代金を受け取ったときの領収書も扱いが違います。この記事では、国税庁の印紙税額一覧表と質疑応答事例、印紙税法の条文を開いて確かめた範囲で、車屋さんが扱う売買契約書と印紙の関係を整理します。税額は令和8年4月1日現在の国税庁の一覧表によります。

この記事で確認した一次情報

売買契約書の印紙税と売る物の種類

売買契約書に印紙が必要かどうかは、売る物の種類で決まります。印紙税法第2条は、別表第一の課税物件の欄に掲げる文書にだけ印紙税を課すとしています。売買に関係する号は第1号の1で、対象は「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書」です。無体財産権は特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号、著作権を指します。自動車はこの一覧に入っていません。国税庁の質疑応答事例「請負と売買の判断基準(1)」は、物品の売買契約は継続する売買契約で第7号文書になるものを除き不課税文書になると回答しています。同じ事例集の「請負と売買の判断基準(2)」も、単発(1取引)の売買について目的物の種類等を定めた契約書を不課税としています。中古車1台を売る契約書は、この単発の物品売買に当たります。

売る物・契約の形印紙税上の区分印紙
中古車・新車1台の売買契約書(注文書)物品の単発の売買不要(不課税)
タイヤやカーナビなど用品の売買契約書物品の単発の売買不要(不課税)
業者間で継続して車両を売買する基本契約書第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)4千円
店舗用地・建物の売買契約書第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)契約金額に応じて必要
展示場の土地を借りる土地賃貸借契約書第1号の2文書(土地の賃借権の設定に関する契約書)契約金額に応じて必要
お客様の指定仕様で車両を製作・架装する契約書第2号文書(請負に関する契約書)契約金額に応じて必要

表の最後の行は、売買に見えて請負に当たる例です。印紙税法基本通達は、製作者の材料を使い注文者の設計や指示した規格に従って車両などを製作する契約を請負とし、あらかじめ規格を統一した物品をカタログや見本で受注して製作する契約を物品の譲渡としています。キャンピングカーや福祉車両の架装を個別の仕様で引き受ける場合は、請負の側に入る可能性があります。請負の契約書の税額は注文請書・請負契約書の印紙税の記事にまとめました。

「売買契約書にも印紙が要る」という古い情報に注意

国税庁の質疑応答事例「物品販売の注文請書」の注記によると、物品の譲渡に関する契約書は平成元年3月まで旧第19号文書として課税されていました。現在の一覧表にこの号はありません。昔の書式に印紙欄が残っている場合は、この改正の前に作られた可能性があります。

中古車の売買契約書・注文書で印紙が要るケース

中古車の売買契約書そのものは不課税ですが、書き方によっては同じ紙が課税文書になる場合があります。注意が要るのは、代金や手付金を受け取った旨をその紙に書くケースです。印紙税法基本通達の第17号文書関係は、文書の表題や形式がどのようなものでも、「相済」「完了」のような簡略な文言でも、当事者間で金銭の受領事実を証明する目的なら第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に当たるとしています。国税庁のNo.7141は、売上代金に手付けを含むと明記しています。たとえば、注文書の下欄に「手付金100,000円 受領しました」と書いて店の印を押し、お客様に控えを渡すと、その控えが受取書として扱われる可能性があります。売買の部分が不課税でも、受領の記載がある文書の扱いは別に判断されるため、書式を作るときに税務署に確認してください。

  • 注文書や売買契約書に車両価格、諸費用、支払方法だけを書く場合は、売買の記載だけなので不課税です。
  • 同じ紙に「手付金○円受領」「内金○円お預かり」と書いて店が控えを渡すと、受取書に当たる可能性があります。
  • 手付金の受領を別の領収書で出すなら、その領収書を第17号文書として判定します(5万円未満は非課税)。
  • 納車前の整備や架装を同じ紙で請け負って金額を書くと、請負の記載として第2号文書に当たる可能性があります。

4つ目は、通達が修理又は加工を内容とするものを請負に当たるとしていることからの整理です。車両の売買と、売買に付随する整備や用品の取付けをどう書き分けるかで判断が変わり得るため、断定はできません。ここで挙げた例は、税務署に相談するときの論点の目安としてお使いください。

業者間の継続取引は第7号文書(4千円)

業者同士で継続して車両や部品を売買する基本契約書は、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に当たり、印紙税は1通4千円です。国税庁のNo.7141は第7号文書の例として、売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書を挙げ、契約期間が3か月以内で更新の定めのないものを除くとしています。質疑応答事例「請負と売買の判断基準(2)」でも、継続する2以上の売買取引について目的物の種類等を定めた契約書は第7号、契約期間が3か月以内で更新の定めがないものは不課税と整理されています。中古車販売店であれば、業販の取引先と継続して車両を売り買いする基本契約書や、部品商と交わす取引基本契約書がこれに近い形です。第7号は契約金額にかかわらず定額なので、金額を書いても書かなくても税額は変わりません。個々の取引で交わす1台ごとの注文書は、基本契約書とは別に判断されます。

第7号文書に当たるかどうかは、契約期間や契約で定めている内容によって細かく分かれます。その条件の細部(印紙税法施行令の定め)はこの記事では確認していないため、基本契約書を作るときは文案を税務署か顧問税理士に見てもらってください。

店舗・展示場の土地建物の売買契約書(第1号文書)

店舗の土地や建物を買うときの売買契約書は、第1号の1文書「不動産の譲渡に関する契約書」に当たり、契約金額に応じた印紙が必要です。国税庁のNo.7140の本則の税額は、契約金額が1万円未満なら非課税、1万円以上10万円以下は200円、10万円を超え50万円以下は400円、50万円を超え100万円以下は1千円、100万円を超え500万円以下は2千円、500万円を超え1千万円以下は1万円、1千万円を超え5千万円以下は2万円です。ただしNo.7108によると、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約金額が10万円を超えるものは税額が軽くなります。たとえば1千万円を超え5千万円以下なら、本則の2万円が軽減後は1万円です。展示場用に土地を借りる土地賃貸借契約書も、No.7140では第1号文書の例に挙がっています。

記載された契約金額本則の税額軽減後の税額
100万円を超え500万円以下2千円1千円
500万円を超え1千万円以下1万円5千円
1千万円を超え5千万円以下2万円1万円
5千万円を超え1億円以下6万円3万円

表は契約金額100万円超の区分を抜き出したもので、軽減後の税額は令和9年3月31日までに作成する不動産の譲渡に関する契約書に適用されます。10万円を超え50万円以下は200円、50万円を超え100万円以下は500円に軽減されます。車の売買と違い、不動産の契約書は印紙の金額が大きくなるので、契約日と軽減措置の期限を確かめておきましょう。軽減措置の対象は不動産の譲渡に関する契約書です。土地賃貸借契約書は第1号文書でも軽減の対象に挙がっていないため、本則の税額で判断します。

中古車の代金を受け取ったときの領収書の印紙

売買契約書が不課税でも、車両代金を受け取って紙の領収書を渡すと、その領収書には印紙が必要になります。車両代金の領収書は第17号の1文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」で、国税庁のNo.7141によると、受取金額が5万円未満なら非課税、5万円以上100万円以下は200円、100万円を超え200万円以下は400円、200万円を超え300万円以下は600円、300万円を超え500万円以下は1千円、500万円を超え1千万円以下は2千円です。No.7124により、消費税の課税事業者が消費税額等を区分して書けば、税抜の金額で判定できます。「税込」とだけ書くと税込金額で判定されます。中古車販売では1件あたりの金額が大きいため、領収書1枚の印紙も400円や600円になりやすく、台数が増えるほど負担が積み上がります。また、営業に関しない受取書は非課税なので、個人が自家用車を手放して代金を受け取る場合の受取書は課税されません。

領収書の書き方(例)記載金額印紙税額
車両代金 税抜1,800,000円 消費税180,000円 合計1,980,000円180万円400円
車両代金 合計2,090,000円(税込)209万円600円
車両代金 税抜1,900,000円 消費税190,000円 合計2,090,000円190万円400円
車両代金 税抜3,200,000円 消費税320,000円 合計3,520,000円320万円1千円
手付金 50,000円(税抜・税込の区分なし)5万円200円

2行目と3行目は同じ取引です。税抜の金額と消費税額を分けて書くだけで、区分が1つ下がり、印紙が600円から400円になります。表は国税庁の税額表とNo.7124を当てはめた試算で、登録費用などの立替金を同じ領収書に含める場合の扱いは、この記事では確認できていません。立替金を含めた書き方は税理士に相談してください。

電子で渡す領収書には印紙税がかからない

国税庁の質疑応答事例は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げる文書で、電磁的記録は文書に含まれないとしています。紙の領収書を作らず、PDFの電子領収証をお客様に提供する方法なら、印紙税の課税原因は生じません。整備システム・整備ソフト DREAM POWERのオプション「電子領収証システム」は、入金入力から電子領収証(PDF)を作り、QRコード付きの案内用紙をお客様に渡す方式です。お客様はスマートフォンでQRコードを読み取るだけで、アプリや会員登録は要りません。発行した電子領収証はWEB管理システムに自動保存され、顧客名・領収証番号・発行日で検索できます。車両販売でも整備でも、整備システム・整備ソフト DREAM POWERの入金入力を起点に動きます。

お客様から紙の領収書を求められて紙で交付した場合は、通常どおり印紙税の対象です。電子領収証システムは発行時に「紙で発行」「電子で発行」を選べるので、どちらで出すかの社内ルールを先に決めてください。電子で発行した領収証の控えは、電子帳簿保存法の電子取引データとして保存方法を決めておく必要があります。

整備工場・車販店の領収書を電子化しませんか?

中古車の車両代金や整備代など、5万円以上の会計が多い店ほど、紙の領収書の印紙代と貼付・割印の手間が積み上がります。整備システム・整備ソフト DREAM POWERの入金入力から電子領収証を出す運用が自店に合うか、まずはご相談ください。

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よくある質問

中古車の売買契約書(注文書)に収入印紙は必要ですか?
1台ごとの中古車の売買契約書は、物品の売買を内容とする契約書なので印紙税はかかりません。国税庁の質疑応答事例「請負と売買の判断基準(2)」は、単発の売買取引について目的物の種類等を定めた契約書を不課税としています。印紙税法別表第一の第1号の1に掲げる譲渡の対象は不動産、無体財産権、船舶、航空機、営業などで、自動車は入っていません。
昔は売買契約書にも印紙を貼っていたと聞きましたが?
国税庁の質疑応答事例「物品販売の注文請書」の注記に、物品の譲渡契約は平成元年3月までは旧第19号文書として課税の対象になっていたとあります。現在の印紙税額一覧表に物品の譲渡に関する契約書の号はありません。古い書式や古い解説を見るときは、この改正の前か後かを確かめてください。
売買契約書に「手付金10万円を受領しました」と書くと印紙は要りますか?
印紙税法基本通達は、表題や形式に関係なく、金銭の受領事実を証明する目的の文書を第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に当たるとしています。国税庁のNo.7141では売上代金に手付けを含みます。売買契約書に受領した旨を書くと受取書の記載として課税される場合があるため、書式を作る段階で税務署に確認してください。
業者同士でオークション代行や業販の基本契約書を交わす場合はどうなりますか?
国税庁の質疑応答事例は、継続する2以上の売買取引について目的物の種類等を定めた契約書を第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)としています。税額は1通4千円で、契約期間が3か月以内で更新の定めがないものは除かれます(No.7141)。契約の中身によって号が変わるため、文案で確認するのが確実です。
中古車の代金の領収書は、いくらから印紙が必要ですか?
車両代金の領収書は第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)で、受取金額が5万円未満なら非課税、5万円以上100万円以下は200円、100万円を超え200万円以下は400円、200万円を超え300万円以下は600円、300万円を超え500万円以下は1千円です(No.7141)。電子データで渡す領収書は紙の交付に当たらないため、印紙税はかかりません。
整備工場や車販店で、領収書の発行を整備・販売の管理とまとめて扱えますか?
入金と領収書の発行を別の仕組みで扱うと、金額や宛名の転記ミスが起きやすくなります。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)の入金入力から領収書を出せば、転記が要りません。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるか、電子領収証に対応しているかも確かめてください。

参考にした一次情報

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